今回より数回にわたり、「ハンドメイドルアー "ここにフォーカス"」と題して、ルアー製作に使用する材料や道具の中から何か一つに焦点を合わせ徹底的に分析していきたいと思います。まず第一回目はルアーのフレームにフォーカスしてみました。
フレームはルアーの中心を貫通している針金で、つまりルアーの骨格にあたる部分です。魚がヒットしたときフレームに通じるアイには全ての荷重がかかります。皆さんは、せっかくヒットさせた大物にアイの部分をグニャ〜と曲げられ、逃がしたという経験はありませんか?(私は数回あります)。ですから大物を捕れるか否かはフレームの強度に左右されるといっても言い過ぎではありません。それではフレームの材料にはどのようなものがあるのでしょうか。
フレームの材料となる針金の材質にはステンレスのSUS304が一般的に使われています。ステンレスといえば錆びないとイメージする方も多いと思いますが、SUS304は思ったより錆びやすい材質です。特に海でルアーを使用した後は錆びに注意しなければなりません。真水で塩分を洗い流しルアーを乾かせば何の問題もないことなのですが、私みたいに釣り場で体力を使い果たし、帰ってきたらいきなり「バタッ」と寝てしまうような者にとっては、その作業も面倒くさいものです。そこでメーカーには、より優れた耐食性があるSUS316またはSUS316Lの針金を・・・と思ったのですが、先に私のなまくらな性格を直したほうが良さそうです。ハイ。
このSUS304はさらにハード(ステンレス硬質線)、ソフト(ステンレス軟質線)に分類されます。ここでステンレス針金のハードタイプについて考察してみましょう。
ステンレス針金のハードはその名のとおりカチンコチンに硬く、加工するのも簡単ではありません。ラインアイ、フックアイなどの形成は、針金を釘などの丸い物にあてがってペンチで締め付けておこなうのですが、きれいな楕円形を作ることができるようになるには慣れが必要となってきます(アイの形成はルアーを作ろう ジグミノー前編に掲載しています)。ルアー作りビギナーはこの時点でうまくいかず、「もう、や〜めた」となってしまうパターンも多いのではないでしょうか?。このステンレス針金ハードを使ってのフレーム加工はルアーを作っていく工程で最初にぶち当たる難関だといえます。それでも加工の段階で一苦労するぶん、ビシッと形が決まれば最高のフレームができあがります。
このカチンコチンに硬い針金で作ったフレームはちょっとやそっとの力では曲がりません。大物の引きにも、じゅうぶん耐えることができるでしょう。また、ルアーが岩などの障害物にぶつかったときの衝撃でラインアイ、フックアイが変形してしまうというトラブルもほとんどありません。
全長5-8センチのルアーには線径φ0.8の針金を、そして全長9-13センチのルアーには線径φ1.0の針金を使ってフレームを作れば、強度的にも見た目にもバランスのとれたルアーができあがります。
次にステンレス針金のソフトタイプ(ステンレス軟質線)について考察してみましょう。ステンレス針金のソフトタイプはクニャクニャに軟らかく、ステンレス針金ハードとは違い加工も容易です。ラインアイ、フックアイの形成は練習をしなくても、まるで市販品のルアーのように、きれいな楕円形に曲げることができるでしょう。そしてフレームのゆがみを修正する作業ではバイスにギュギューと挟むだけでラインアイとフックアイがビシッと一直線に揃ったフレームができあがります。このステンレス針金ソフトは加工がスムーズで楽ちんというところが最大のメリットです。
加工する段階ではメリットが大きいステンレス針金ソフトですが強度的にはどうなのでしょうか。やはり材質が軟らかいぶん、強度はステンレス針金ハードに比べると数段劣ります。具体的には強い力が加わるとラインアイやフックアイが伸びたり曲がったりすることがあるのです。魚とのファイト中にラインアイやフックアイが伸びたり曲がったりすると、そのはずみでフックが外れ「痛恨のバラし!」ということにもなりかねません。また、ルアーが岩などの障害物にぶつかった時の衝撃でラインアイ、フックアイが変形してしまい、泳ぎのバランスを崩すというトラブルも発生しやすくなります。
それでも、この軟らかい材質のステンレス針金ソフトに強度をもたせる方法は一つだけあります。これは当たりまえといえば当たりまえなのですが針金の線径を太くすればいいだけのことです。全長5-8センチのルアーには線径φ1.0で、そして全長9-13センチのルアーには線径φ1.2のものを使ってフレームを作れば、たいていの魚に対応できると思います。ただしルアーのサイズに対して針金の線径が太過ぎるので、デザイン的にはちょっとアンバランスな感じがします。
このように同じステンレス(SUS304)の針金でも硬さによって加工難度やフレームの強度に、ずいぶんと違いが出てきます。「硬いほうを選ぶのか、それとも軟らかいほうを選ぶのか」「さあ、どっち!!」。
ちなみに私の場合、初めは加工が楽だという理由でステンレス針金ソフトを使っていましたが現在はステンレス針金ハードでフレームを作っています。